米トレードテック コンテナ早期搬出を提供 国際輸送PF、利用者の利便性向上。 

フォワーダーやBCO(直荷主)向けに、国際輸送管理プラットフォーム(PF)を提供する米トレードテックは利用者向けに、米国港湾での早期搬出制度「ピールオフスタック」の提供を拡大している。従来、大手荷主に利用が限られていた同制度だが、トレードテックが自社システム利用者の物量を取りまとめることで、同制度の利用が可能となった。国際輸送管理と合わせて提供することで、利用者の利便性を向上する。  トレードテックは香港船社OOCLや米フォワーダー大手フリッツ(現UPS)で国際輸送の経験を積んだブリン・ハインベック氏が1997年、煩雑な国際輸送業務のペーパーレス化、効率化を目的に設立したIT企業。米国本拠のほか、カナダ、仏、日本、香港、上海、台湾、インドにも自社拠点を置く。  トレードテックのソリューションは、海上・航空輸送の工程可視化や見積もり・ブッキングなどの国際輸送管理、PO(発注書)管理、在庫管理などを単一のデジタルプラットフォーム(PF)上で行えることが特色。米国内ではトラック、鉄道輸送も可視化できる。  日本では日本版24時間ルール対応などで既に複数の企業が利用しており、大手フォワーダーが国際輸送の基幹システムとして採用した事例もあるという。  海上貨物のオンラインブッキングでは、大手船社とは直接接続するほか、海運ポータルを運営する香港カーゴスマートとも接続しているため、世界の主要な航路をカバーしている。  トレードテックは年初から、利用者へのピールオフの提供を開始した。  ピールオフは港湾混雑の緩和を目的に、大量の貨物を有する大手荷主を対象に、迅速な貨物搬出を可能とするシステム。事前に登録した輸入貨物を、本船から荷降ろし後、直接指定エリア(ピールオフスタック)に移動。ターミナルからのコンテナ搬出は、ピールオフ専用の登録トラッカーが専用レーンで行うため、ゲートでの待機時間も短い。大量の貨物が円滑に搬出されるほか、一般エリアの荷役も効率化される。現在、ロサンゼルス港・ロングビーチ港の特定のコンテナターミナルが対象だが、西岸北部港などに対象を拡大する動きもあるという。  米国港湾ではコロナ禍以前から処理能力の問題が発生していたが、西岸・東岸の主要港は都市部に近接し、環境アセスメントなども厳しくなっていることから、拡張や新規ターミナル開発が難しい。  ハインベック氏は「スペースが増やせない中で、新技術で処理能力を改善しようというのがピールオフだ。トレードテックは750社以上のNVOCC(海上利用運送事業者)・フォワーダーが利用している。このメンバーの取扱量の総計は、一例として、ロサンゼルス港・ロングビーチ港では毎週コンテナ4000本に達する。トレードテックがこれらを1つのコミュニティを取りまとめることで、ピールオフを利用することができるようになった」と説明する。単一のBCOではなく、デジタルPFの運営企業が利用者向けにピールオフを提供するのは、トレードテックが初となる。  ピールオフを利用した場合、ドレージのトラッカーに対して追加コストが発生するほか、トレードテックも少額の手数料を支払う必要がある。  しかし、コンテナを早期搬出できることでサプライチェーンが安定するだけでなく、コンテナ滞留によるデマレージ(超過保管料)・ディテンション(返却延滞料)発生のリスクを避けられ、メリットは大きい。  トレードテックの利用者であれば、日本発を含めた米国輸入貨物でピールオフを利用可能。トレードテックはピールオフのメリットを浸透させることで、自社システムの利用拡大にもつなげたい考えだ。